最近、とある放送業界の方からいただいたテーマは、まだ多くの人が意識しない内容でありながら、非常に重要なテーマになりそうな予感がしています。それは映像という独立したセクションの確立につながる話でもあると思います。

 劇場空間において、今後もさらに映像セクションの地位が重要なものへ変貌していくことは間違いありません。そして今や映像の効果は照明と非常に密接であり、劇場のシステムを構築する上で、映像と照明を意識したインフラ工事というのは今後、重要になるだろうと考えられます。

 通常、プロジェクタールームというのは、映写室などと呼ばれ、正面から舞台のスクリーンに映像を照射することだけを念頭に置いたものでしかなく、センターにはでかでかとプロジェクターが設置され、それを制御するコントローラーを置くとか、人がそこでオペレーションするような構造にはなっていない。当然ながら、音響卓と照明卓はあれど、映像卓を設置した劇場などはなく、単にプロジェクターがあるだけのような状況です。

 さらには、リアプロジェクションの位置やフロント位置、ギャラリー、シーリング、ブリッジ等に映像を配信するようなインフラはなく、正面のブース位置から映像を配信するようなシステムは存在しない。しかし、これからの映像というのは、フロント位置やリアプロジェクション、そしフロント位置のプロジェクターの映像などがすべてつながるマルチスクリーンとなったり、そしてそれらを照明効果としてとりいれたり、またはセットデザインの一部にもなり得る。おそらく今後の劇場では、そういう演出が増えて行くのだろうと考えます。

 もちろん、まだまだ、そういう事例は少ないかもしれないですが、ある劇場で、海外からくる公演のために、光インフラを用いて、映像配信のテストをした際、この映像を意識したインフラというのはすごく重要になるだろうなと感じた次第です。

 未来の劇場のプロジェクタールームには、もしかしたら、MediaServerのような装置やそれを制御するコントローラー、スイッチャー等のシステムが必要になり、仮設ではなく、常設として光ケーブルによるセンタールームからの各所への映像配信が可能なシステムは、本当に必要になるだろう。その意味で、今、このテーマが与えられたのには、いいタイミングだなあと感じる次第です。